高尚なワタシ

 

 

 

 

 

天真爛漫、というと大変聞こえがよいが、とどのつまりは周囲への配慮に欠けた単細胞なのではないか。
と、思いきや、意外に目端のきくところが気に入らない。

こちらの言い分を聞き入れているようで、さりげに自分のペースに持って行こうとするのは技とも言える。

苦手なのかもしれない。

…けれど、気が着くと視線が追っているのは何故だろうか。

 

 

 

「春だから」

という、たいそう直裁な理由でお呼びがかかった。場所は天蠍宮。主催者はミロ。参加予定者は黄金聖闘士。奴は付き合いがいいので、恐らく開始一時間前には天蠍宮に赴き会場設営くらいは手伝うに違いない…と、思う。

困った。

どのタイミングで出てゆくべきか。

奴の来る時間に併せて一時間前…、というのは確実に間が持たないであろう。

では、集合時間。

しかし、全員が全員集合時間に間に合うとは限らない。アルデバランもムウも時間にルーズた性質では無いが、場所が十二宮内という事で、多少は時間にゆとりを持ってやって来るかもしれない。

ミロは、そうしたもてなしに手を抜く性格ではないから、恐らくは料理や準備にかかりきりになるであろう。

残された場で…自分がどう振舞うべきか。

…。

いっそ何がしかの理由をつけて欠席してしまおうか。

だが、それでは数少ない邂逅の場を失ってしまう。

まて、私は果たして奴に会いたいのだろうか。それとも会いたくないのだろうか。


処女宮で、延々悩んだ挙句にシャカが宮を出たのは、夜半過ぎた頃。
しかし彼は知っている、しきりに気にかけていた人物が、とても酒に強く、めったな事では酔わない事を。

己を高尚な人間だ、と、思っているのは、存外自分だけだったりするものだ…、と、言う話。
だからこそ余計に性質が悪い。

(了)

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