猫の仇討ち(3)

 

 

 

 

 

 猫の国、王付き第一秘書ナトリ氏は、引継ぎ作業に余念が無かった。王とともに引退を決意した彼は、第二秘書ナトルに、己の仕事すべてを引き継ぐつもりであった。

「ナトリ様ぁ〜、こぉんな短い時間に、私には無理ですよぅ〜」

 まんまる顔のナトルがぼやいた。

「何を言うんですか、ナトル、私がいなくなったらお前が第一秘書です。即位なさるルーン王をお助けし、宮廷典礼、その他もろもろ、誰が中心となってやるんですか?!」

「でもぉ〜」

 ぼやくナトルを、ナトリが小突いた。

 その時、ノックの音がした。

「失礼いたします」

 声がして、後に、黒猫が続いた。入ってきたのは、近衛隊長のミカエルだった。

「ナトリ様、経済連よりの使者をお連れいたしました、猫柳の間にお通ししてあります」

「うむ、わかった…、ではナトル、私が戻るまで、典礼三〇条まで目を通しておくように」

「はーーーい」

 ナトリが出て行くと、部屋にはナトルとミカエルが残った。

「はにゃ?ミカエル殿は行かないのですか?」

「いえ、私は…」

 答えてミカエルはナトルに向き直った。

「ナトル様は…、ルナルド=ムーンについてご存知ですか?」

「ルナルド?…ああ、ムタさんの事ですか?ハル様の従者の方ですね」

 ナトルはいまだにムタの事をハルの従者だと思っている。

 一方その頃…。

 ハルは、やすらかな眠りに身をまかせていた。そこはとても暖かくて、いつまでも眠っていたいような気がした。ゆっくりと、目を醒ますと、そこは草原で、天から光が降り注いでいる。どこかパステルトーンな色調のそこは、見覚えがあった。

「…ここ、どこぉ?」

 寝ぼけた頭で、必死で考える。

「…目が醒めたか」

 ハルが見上げると、二本足で立つ、黒い猫がいた。

(…to be continue)

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