カタコヒ

 

たとえば、あいつより先にお前に出会っていたら。

 

たとえば、同じ星、同じ時代に生まれたのなら。

 

意味の無い問い。

 

答えの無い問い。

 

それでもやはり、思わずにはいられなかった。

 

俺じゃ…、ダメか?

 

…と。

 初めて出会ったのは空港だった。多分あいつは覚えちゃいない。デッキで、飛行機を見送るお前の姿を、忘れられずに、次に逢った時は、…うれしくて、どう言っていいのかわからなかった。

「ほら、オレって、イイ男だから」

 口をつくのは、いつだって軽い言葉。

「あたしのこと、おだんごって呼んでいいのは、まもちゃんだけなんだからねっ!!」

 ムキになってつっかかってくるあいつを、いとおしいと思う。…守りたい、と、思った。

 探している、プリンセス。届かない、声。

 わかっていた。それでも…。

「夜中に、女の子の部屋の外にいるのを、ヘンタイって言うんだよ」

 友達のような顔をして、笑う。

「なんで…っ、返事がないのっ…逢いたいよ…まもちゃんに、…逢いたい…」

 俺の前で、無防備に、泣く。

「なんでだよ…、なんで傍にいてやらねーんだよっ!!」

 したたか、壁に拳を打ち付ける。少し、血がにじんだ。

 たとえ思いが届かなくても、守りたいから、いとおしいから…。

「これからは、お前が守ってやれ!…って、コレ、キザなヤツのセリフ…、じゃあな。…おだんご」

「うん…ずっと、友達…だよね」

 涙ながらにあいつが言った。

 あーあ、ったく、最後まで、気づいていたのか、いないのか。

 ま、しゃーねーか。

(了)

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